第16章 ◆番外編3「見合い」
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先輩さんの本丸に到着した。
ここへは新人のころ、一度来たことがある。
ここの皆さんは賑やかで、たしか当時の先輩さんの近侍は乱さん。
先輩さんは笑いながら乱さんが一番好みなんだと言っていて、端から見たら恋人みたいだったっけ。
私たちが敷地に入って馬から降りると、本丸の中で「おーいあるじさーん! お相手さん来たよー!」という乱さんの声がしたから、おそらく近侍は今も彼なんだろう。
馬に乗ってここへ来るまで、長谷部さんとは一言二言しか話をしなかった。
だって…てっきりお見合いを組んだことを責められると思ったのに、何も言わないから。
それがいつもの長谷部さんではない気がして、怖かった。
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「おー、よく来たねぇ」
しばらく敷地で待っていると、先輩さんが本丸から出てきた。乱さんも一緒だ。
一応よそ行きの羽織の着物を着ているみたいだけど、ゆるい雰囲気は隠せていない。
「お久しぶりです、先輩さん」
「そっか、そう呼ばれてたんだっけ。…へえ、近侍はへし切長谷部か。前は確か山姥切だったよね」
「はい。今は長谷部さんです」
「ようこそ。んじゃ、お席で楽しく食事にしよう。おいで、ポケ子ちゃん」