第16章 ◆番外編3「見合い」
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お見合い当日─……
朝、別室で燭台切さんに、近侍を代わる旨を長谷部さんに説明してもらっていた。
私はその間にお見合い用の着物に着替えた。
いつもは無地の紬だけど、今日は薄桃色の訪問着。
恥ずかしいから、本丸の皆さんにはあまり見られたくない…。
燭台切さん、まだかな。
「主、行きましょうか」
「え!? 長谷部さん…!?」
説得を終えたら燭台切さんが戻ってきてくれる約束になってたんだけど…この部屋に迎えに来たのは、なんと長谷部さんだった。
私は驚いて、意味もなく座ったまま訪問着を手で隠していた。
「あの、今日の近侍は燭台切さんにお願いしたはずですが…」
「………見合いだからですか?」
「えっ…」
バレてる!?
うそ…どうして…
「いきなり近侍を代われなどと言われて納得できるわけないでしょう。燭台切を締め上げたら喋りました」
そんな…。
「長谷部さん、あの…」
「俺は主命とあらば、何でも致しますよ。それが貴女の見合いの立会でも。…行きましょう。約束に遅れます」
あれ…?
長谷部さん、思ったより怒ってない…?
「……ごめんなさい、長谷部さん…黙っていて…」
一応、恐る恐る謝罪をしてみると、彼はこちらを見ずに馬の用意を続ける。
私は気まずくて、それ以上何も言えなかった。