第15章 ◆番外編2「現代遠征」
引き換え、長谷部も。
風呂からあがり浴衣の帯を結びながら、気落ちしていた。
(この期に及んで俺は、一緒に入ろうと言って下さるかと期待していた。…が、今夜は本当に主にはその気がないらしい…。誘ってはご迷惑だろう…。……でも、悲しいです、主…)
畳に布団が二組敷いてあり、長谷部が風呂から上がるとすでに彼女は片方に横になっていた。
眠っていないようだが、眠ろうとしている。
長谷部はもう一つの布団の上に座り、彼女に声をかけた。
「…主。お疲れ様でした。ゆっくり休んで下さい」
「………はい。おやすみなさい」
彼女の声は少しふて腐れていて、ついでに長谷部に背を向けたままだった。
長谷部は寂しく感じたが、きっと彼女は疲れているのだろうと自分を納得させ、室内灯を消すと、布団の中へと入る。
部屋の中は暗くなったが、薄いカーテンを閉めただけの窓から入ってくるライトアップと月の光が、ほんのりと照らしている。
本当なら、抱き合うには最高の雰囲気だった。
長谷部は眠れず、隣の布団で眠る主の背中ばかりを見てしまう。
(…主…)
しっとりとした髪の、いつもと違う浴衣の彼女。
(…抱きたい…)
唇を縛り、募っていく気持ちを抑えるしかない。