第15章 ◆番外編2「現代遠征」
店から出た彼女に気付かず、長谷部はまだ女性グループに振り回されている。
「待ってる人って誰ー? 友達? 彼女?」
主のことを友達や彼女かと聞かれても長谷部はピンと来なかった。
大切な恋人。そして尊敬する主君である。
「悪いが俺のことは放っておいてくれ。ここへは仕事で来ていて忙しい。今もその相手を待っている」
長谷部はピシャリと言い放った。
そこまで言われてやっと女性たちは諦めたのか、しぶしぶ長谷部から離れようとするのだが…その直前に長谷部は主が店先にいることに気付き、パッと明るい表情に変わった。
「おかえりなさいませ! 買えましたか?」
「は、はい…。お待たせしました…」
女性たちの鋭い視線を浴びながら、主は長谷部の隣へと戻る。
すると女性たちは、主にしか聞こえないような小さな声で、「なんだ、別にそんなに美人でもないじゃん」とコッソリ呟いて去っていったのだった。
──ズキン
女性グループの言葉は負け惜しみであり彼女への正当な評価とは言い難いものの、主はその言葉に傷ついた。
そして、自分はこの状況をデートだと喜んでいたのに、先ほどの長谷部の言葉にも胸が痛む。
─『ここへは仕事で来ていて忙しい。今もその相手を待っている』─
(…そうだよね…。私ったら、何を一人で浮かれていたんだろう…)