第15章 ◆番外編2「現代遠征」
長谷部がしばらく立って待っていると、そばに三人の女性観光客がやってきた。
長谷部はそのグループにちらちらと見られていることに気付いたものの、トラブルを避けるために黙ってやりすごしている。
しかし、女性たちはついに声をかけてきた。
「お兄さん、ひとりですかー?」
「良かったら一緒に回りませんか?」
「私たち、滝の絶景スポット知ってるんですよ」
興奮気味の笑顔で話しかけてくる女性たち。
それもそのはず、美形の長谷部は周囲の観光客の中で一際目立っており、話し掛けてきた女性グループも皆美人だった。
「……人を待っている」
長谷部は警戒しながら素っ気なく答えた。
しかし時代錯誤に気付かれないよう慎重に言葉を選んで対応しているため、いつもの調子で蹴散らすことはできない。
「えー、誰待ってるんですかー?」
「言う必要はないだろう」
「女の人ー?」
女性のうち一人が、長谷部の腕に触れた。
長谷部が本格的に困りだしたとき、買い物を終えた主が店から出てきた。
「長谷部さん、買えま、し、た…」
彼女の目に飛び込んできたのは、華やかな女性に囲まれている長谷部の姿。
声を掛けなければと思いつつも、美人な女性たちにひるみ、主はしばらくその場を動けなかった。