第15章 ◆番外編2「現代遠征」
宿に荷物を預けて、花岩まで続いている温泉街を散策することに。
観光客が行き交うそこは、時代を感じる建物と饅頭屋から立ち込める湯気で、雪景色の中にも温かみが溢れていた。
二人は手を繋ぎ、人の間を縫いながら進んでいく。
主は老舗の饅頭屋の前で足を止めた。
「長谷部さん。温泉饅頭ですって。出来立てを売っているみたいですよ。食べてみませんか?」
「いいんですか? 是非」
この日は長谷部も浮かれているのか遠慮をせず、主とのデートを心から楽しんでいた。
店先で売られていた色々な種類の餡が入った饅頭を、二人で分け合いながら味見をしていく。
「んん! やっぱり出来立ては美味しいですね!」
笑顔になった彼女を見ていると、長谷部の心も温かくなる。
長谷部は彼女に見惚れながら、「そうですね」と呟いた。
「私、本丸の皆さんへのお土産用に見繕ってきますね。お店の中は狭そうなので…長谷部さんはこちらで待っていてもらえますか?」
「分かりました」
主はガラス戸の饅頭屋の中へ入っていき、長谷部は彼女に目をやりながら、店先の邪魔にならない場所で立っていた。