第15章 ◆番外編2「現代遠征」
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そして遠征当日。
主と長谷部は無事に現代の花札温泉郷へと降り立った。
宿が密集した温泉街を中心に、少し歩けば川辺や滝、そして花岩に行ける自然豊かな観光地である。
降り始めの季節の雪がかすかに積もるこの日も、観光客で賑わっていた。
「寒くありませんか、主」
「はい。大丈夫です」
現代ということもあり、遠征中の二人は私服である。
主はクリーム色のニットワンピースにブーツ、紺のダッフルコート。
長谷部は白のワイシャツにベージュのセーター、黒のボトムスにグレーのコートというシンプルな装いだ。
(長谷部さん…格好いいなぁ…)
雰囲気の違う彼を横目で見つつ、主は案内所でもらったパンフレットを開く。
「花岩は温泉街のすぐ近くですね。泊まる宿も近いので、荷物を預けてさっそく行ってみましょうか」
「かしこまりました」
主はこの日ばかりはと、長谷部を先導して歩く。
「はぐれないようにしましょうね」
そう言って、彼女は長谷部の手を握った。
「主…」
手を繋いだまま、二人は温泉街を目指して歩きだす。
まるでデートみたいだ、と。二人の胸はドキドキしていた。
この日のために、主は露天風呂付きの豪勢な部屋をとっている。
審神者としての遠征だと分かっていても、長谷部との温泉旅行に心は弾むのだった。