第2章 ◆耳元で愛を ★★☆☆☆
(主にお見苦しいところは絶対に見せられないっ…今すぐ離れなければ…)
「主…それでは、俺はそろそろ戻ります」
「は、はい…」
長谷部はそそくさと主に背を向け、襖の向こうへと下がった。
その動作は彼らしくないもので、彼女は不安になった。
最近の彼は主の前では常に包み込むような優しさを持って接していたが、今はとてもそんな余裕はなかったのだ。
「あ、あの、長谷部さん…」
「…はい」
長谷部は振り返らずに返事をした。
振り返れば、大きく盛り上がった下半身を彼女に見られる。
自分がどんな欲望を持っているのか主に明かすなど、やはりしてはならない、と彼は思い直したのだった。
「…ありがとうございました。また、明日…。おやすみなさい」
「…はい、おやすみなさいませ、主」
彼の背中を、主は不安げな瞳で見つめていた。
長谷部は一度振り返り、その潤んだ瞳を目の当たりにしたが、溢れだす熱を抑えるため、それ以上は応えずすぐに襖を閉めたのだった。