第14章 ◆番外編1「猥本」
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長谷部さんがお稽古に行って不在のとき、私が縁側を通りかかると、鶴丸さんと燭台切さんがいた。
鶴丸さんが楽しそうに騒いでいて、燭台切さんは苦笑いをしている様子。
「何してるんですか?」
せっかくなので声をかけてお隣にしゃがむと、鶴丸さんは私を見てニヤリとした。
「主! ちょうどいいところに来たなぁ」
「え?」
「ちょっと鶴さんやめときなって。あとで長谷部くんに怒られるよ?」
止めに入った燭台切さんだけど、長谷部さんの名前を出されると余計に気になってしまう。
身を乗り出して、鶴丸さんの手元を覗いた。
「…これって…」
「見たことあるか? 主。猥本だ! 猥本。万屋に専用の棚ができたんだぜ」
鶴丸さんが開いている本には、裸の女の人がたくさん描かれている。
春画というにはすごくリアル…。
「…もう、鶴丸さんたら…」
「ほら、ここ見てみな。『男が悦ぶ夜伽特集』! 色々書いてあるだろ? …主と長谷部はどんな感じの夜伽をしてんだろうなって、今話してたんだ。なあ? 光坊」
「いや僕を巻き込まないでよ…」