第13章 ◆愛のすべて ★★★★★
「……ああ」
皆の視線に応えるように長谷部は頷き、腕の中の主も長谷部を見上げ、微笑んでいた。
皆の方から晴れやかな空気が手入れ部屋へと流れ込んできて、二人は見つめ合う。
それを見せつけられた鶴丸が「よし、じゃあ戻るぞ!」と号令をかけたことで、皆はにこやかな表情で本丸の屋敷へと戻っていく。
「…主。行きましょう」
「……はい」
主を労りながら、長谷部は彼女の手をひいて皆の後ろを 歩く。
「あ、そうだ」
途中、燭台切だけが二人を振り返った。
「どうした燭台切」
「手入れの時間を見込んで、五日分の主の仕事を皆で手分けして終わらせておいたよ。だから五日間、ゆっくり休んで。…もちろん、長谷部くんとね」
「皆さんでっ…? ありがとうございます!」
彼女がお礼を言うと、燭台切は微笑みを残してまた先に歩きだした。
皆に離されながらも二人のペースで歩いていた主と長谷部は、やがて遠くの空から白い折り鶴がスーッとこちらへ飛んでくるのが見えた。
「あれは…」
「鶴、ですね…」
見覚えがあるそれが近付いてきたため、主が手で受け皿を作って受け止めると、その上に到着した途端に折り鶴はひとりでに開き、ただの紙に戻る。
そこにはこう書かれていた。
『審神者・近侍へ
実践結果は成功とし、近侍・へし切長谷部にかぎり今後も夜伽での手入れが可能となる。
これにて貴本丸への指示は終了する。
今後も歴史改変に対抗する貴本丸の活躍に期待している。』