第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
─ちゅ…ちゅっ…─
「んっ…ん…」
寝ている長谷部に上から口付けている主は、彼に息継ぎの暇を与えないほど夢中で続けた。
長谷部も必死でそれに応える。
なにより、彼女と口付けている間は痛みを感じないため、彼も本能で求め続けた。
口付けを始めて時間が経つほど確信に変わっていく。
資材での手入れではお手上げ状態だったはずの傷が、ゆっくりと治癒していくのだ。
───ヒュッ
そして、この手入れ部屋に矢文が届く。
口付けに夢中になっていた二人がそれを拾わなくとも、はらりと落ちた文は折り鶴の形に変わり二人の側へと飛んできて、ひとりでに開かれた。
二人は舌を絡ませたまま、それを横目で読んだ。
『審神者・近侍へ
貴本丸は本日までの指示にて充分な御霊を得られたものとし、ついてはこれより実践を命ずる。
実践:夜伽を最後まで行い、近侍を全快させよ。
健闘を祈る。』