第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
「なんてこと言うんですかっ…長谷部さんっ…」
「刀として貴女のお役に立てないのなら…お側にいることはできません…」
「そんなことないっ…」
「……俺の一生のお願いです…俺の最期を貴女の刀として終わらせて下さい…」
主は何度も首を横に振るが、長谷部の目が懇願するものに変わっていくのを感じると、力なく項垂れるしかできなくなった。
「…そんなこと…できるわけないですっ…」
「…主…」
自分の手で彼を刀解するなんてできるわけない。その気持ちは変わらないし、刀解する気もなかった。
しかし、刀として生き、刀として死にたいと訴える長谷部に対し、どう向き合えば良いか分からない。
刀としての力を失ってもそばにいてほしいと願うのは、ただの彼女の独りよがりに過ぎないのだ。
それを分かっていた。
「…長谷部さん…私っ…どうしたらいいか、分からないっ…」
主は頬にあてていた長谷部の手に口付けると、それにすがりついて泣くのだった。