第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
長谷部の霞むような微笑みが、主の胸を締め付けた。
髪を撫でている長谷部の手を握ると、彼女はそこへ頬を擦り寄せる。
「いいんですっ…そんなことっ…出陣できなくなっても、そばにいてくれれば、それでっ…」
「……主…俺は刀です…」
「関係ないっ…私が良いって言うのですから、それで良いんですっ…どうなったって、長谷部さんはずっと私の近侍ですからねっ…」
どこまで回復できるか分からない。
二度と刀を振るえないかもしれないし、歩けないかもしれない。体を起こせないかもしれない。
傷の深さから、それは主も感じ取れていた。
しかし、それでもそばにいてくれれば良いというのが、彼女の本心だったのだ。
「………主。燭台切に聞きました…」
「え…?」
「昨夜、俺は…貴女に想いを告げたのですね…」
主は長谷部の目を見つめ返し、ほんの少し、困った顔で頷いた。
長谷部はそれについても、微笑みを返した。
「それは俺の本心です…」
「長谷部さんっ…」
「貴女が大好きです…」