第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
長谷部の意識はやがて安定し、痛みに対する感覚も麻痺を起こしかけていたころ、彼は自分の状況を把握した。
経験したことがないほどの無数の傷、一度破壊を起こすほどの窮地を御守りを使って繋いだだけで残されたわずかな生命力。
「……主。もういいですよ…。俺のために、こんなに資材を使うことはありません…」
彼はかすれる声で、そう言った。
「なに言ってるんですか! こうすれば治せるんだから、頑張りましょう! 痛いかもしれないけど、長谷部さんも気をしっかり持ってください!」
「…もう分かっているでしょう? 主」
長谷部の声は、優しく、彼女を諭した。
主は分かっていた。
だからこそ、涙が止まらなかった。
「っ…やだっ…」
「…この腹部の傷は、刀として致命傷です…刃先が折れているも同然…。…命を助けていただいたとしても…もう貴女の刀として力を発揮することはできないでしょう…」
「そんなことないですっ…私が塞ぎますっ…」
「………主…泣かないで…」
長谷部は痛みに耐え、彼女の目元に零れる涙を指で拭った。
彼は微笑み、その手で彼女の髪を撫でた。