第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
手入れ部屋は暖められ、大量の資材と手伝い札が運び込まれていた。
燭台切が木製の台に長谷部を寝かせると、頭部や腹部の下に血だまりができ、台座から滴り落ちていく。
主は涙でぐしゃぐしゃになった顔でどうにか自分を震い立たせ、彼の血まみれの服を一枚ずつ避けていく。
「……っ……」
傷口を見た瞬間、主は息を詰まらせた。
隣にいた燭台切も目を細める。
「…これは…五日はかかるね。長丁場になるよ」
燭台切はそう呟いたが、それは「助かれば」の話である。
それは主も分かっていた。
だから気休めにもならなかったのである。
主は震える手で、さっそく手入れを始めた。
傷口を塞ぐために大量の資材を消費するが、とても追い付かない。
資材の減りが、まるで長谷部の命が削られていく様を表しているようだった。
「……ふ、塞がらないっ…」
「大丈夫だよ、主。諦めないで、続けるんだ」
泣きべそをかく主を、燭台切は根拠なく応援するしかなかった。
手入れ部屋の扉の外では山姥切が指揮をとり、夜間でも資材集めに行く部隊をすでに編成し、出発する。
しかし、長谷部の傷を見た者は心のどこがで思っていた。
『助からないのではないだろうか』
皆、彼を救うための資材を集めることに没頭することで、それを考えないようにするしかなかったのである。