第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
「どうしたんですか!? 皆さん、血がっ…!」
主の姿を見ると短刀たちはさらに泣き出し、一期と主に雪崩かかるように抱きついた。
「これっ…僕たちの血じゃなくてっ…」
「長谷部隊長のっ…」
「長谷部さん、一人でっ…戦ってて…」
「燭台切さんがっ…逃がしてくれてっ…」
取り乱す短刀たち。
しかしこの大量の血が『長谷部の血』だと理解した主は、サッと背筋が冷たくなっていく。
「えっ……?」
顔面蒼白の主に代わり、一期が三人に問い掛けた。
「詳しく話しておくれ。何があった? 長谷部さんと燭台切さんは?」
泣きながら、三人は代わる代わる答える。
「遡行軍を探してたらっ…いきなり検非違使が出てきてっ…すごく強い奴らで、ボクたちは歯が立たなかったんだっ…」
「長谷部さんが庇ってくれてっ…ここは食い止めるから、僕達は逃げるようにって言われてっ…」
「燭台切さんは僕たちをここまで逃がしてくれた後っ…長谷部隊長のところに戻られましたっ…」
唖然とする本丸。
主は瞳孔が開き、軽い過呼吸を起こしていた。
「そんなっ…検非違使を一人で…?」
「ボクたちが逃げ出すころには、長谷部隊長は血まみれでっ…」
「御守りも使っていましたっ…」
「何だと!? 破壊までいったってことか!?」
鶴丸がそう叫ぶと、主はあまりのショックに力が抜け、膝から崩れ落ちる。
鶴丸は彼女の肩を支えて立たせながら、一期や三日月、大倶利伽羅と視線を合わせ、「俺たちも行こう」と頷き合った。