第12章 ◆長谷部の恋 ★★☆☆☆
◆◆◆◆
それは日が暮れた頃だった。
主は自室で、長谷部率いる一行の帰還を待ちわびていた。
畑も、馬も、炊事場も、刀剣男士たちは一日の終わりの準備に取りかかっている。
残った短刀たちと遊ぶ一期の声や、鶴丸や三日月が縁側で語らう笑い声。
その側で横になっている大倶利伽羅。
何もかもが変わらない日常のはずだった。
いつもの景色が壊れたのは、出陣した短刀たち、秋田、前田、乱の三人が、衣装にべっとりと血をつけて本丸へ戻ってきたところからだった。
「お前たち! 何があったんだ!」
まず気付いたのは庭にいた一期一振。
泣きじゃくる血まみれの弟たちを目にし、血相を変えて駆け付けた。
一期の穏やかではない声を聞き付け、本丸の屋敷の中にいた者たちが続々と庭へ出てくる。
「主! 大変だ!」
部屋で気付かずにいた主も、鶴丸に呼ばれ庭へと駆け付けた。