第10章 ◆酔いの告白★★★☆☆
「山姥切さん…!」
彼は私の上から長谷部さんの体を剥がすと、乱暴に畳の上に放った。
救出された私のことも肩を支えて起こしてくれて、ここでやっと山姥切さんが長谷部さんを背後から殴り、手荒だが助けてくれたのだと分かった。
意識を失くして転がったままの長谷部さんをそっちのけで、山姥切さんは私に手を差し出してくれる。
「嫌な予感がしたから近くまで来てみたら…あんたが俺を呼ぶ声が聞こえた」
「ありがとうございます…。夜伽の指示が出たので長谷部さんに私の部屋に来てもらったのですが…その…指示以上のことをされてしまいそうだったので…。普段はそんなことしないんですけど…」
「…酔ってたからな。さすがの長谷部も理性が効かなかったんだろ」
「はい…」
「怪我はないのか」
「ないです」
「そうか」
よかった。
山姥切さんは長谷部さんを責めたりしない。
「……主、顔が赤いぞ。大丈夫か」
「え……」
それはそうだ、まだ信じられないもの。
長谷部さんも私のこと…好きでいてくれたなんて。
「…なんでもないです」
「そうか。じゃあ、俺は長谷部を部屋まで連れていく。あんたももう休め」
「はい」
山姥切さんは長谷部さんの体を肩に担ぐと、少し重そうにしながら歩きだす。
酔っているところに夜伽の指示が出てしまっただけで長谷部さんは何も悪くないのに、気の毒だけど…。
ここは山姥切さんにおまかせしよう。
─二人が部屋から出ていった後、布団を敷いて、室内灯を消した。
目がさえて眠れない。
今日はすごいことが起きた。
明日になったら、全部夢だったなんてことにならないだろうか。
明日から長谷部さんと私は両想いだと思っていいんだよね…?
明日になったら、きちんと返事をしよう。
私も長谷部さんが好きです、って。
──恋人同士になりたいです。
ちゃんとそう伝えよう。