第10章 ◆酔いの告白★★★☆☆
捕らえられている手首に反発する力を入れてみたものの、びくともしない。
「んんっ……んっ…」
再開した口づけにも重さをかけられ、上半身は身動きすらとれない状態だ。
それならば、と下半身をねじらせて、彼の体の下から抜け出そうと試みる。
しかし上半身を固定されるとどこにも力が入らず、ただジタバタと足を動かすくらいしかできない。
とりあえずまた顔をねじって唇から逃れ、部屋を見渡してみる。
何もない。
この部屋には、私と、私を組み敷いている長谷部さん以外には何もなかった。
どうしよう…どうしようっ…!
「こっ…こんのすけさん! こんのすけさんっ!」
ジタバタしながら叫んだのは、近くにいるであろうこんのすけさんの名前。
するとすぐに障子に小さな影が写った。
「主さま!? どうしたんですか?」
「長谷部さんが酔っていてっ…あの、山姥切さんを呼んできてくださいっ! 山姥切さんなら助けてくれるからっ…!」
私がそう言った、次の瞬間。
──バァン!
障子が鋭い音を立ててあっという間に開き、何が起こったのか把握できないまま、私に襲いかかっていた長谷部さんが一瞬停止し、私の上に崩れ落ちた。
意識を失ってる……何が起こったの……?
「おい、あんた大丈夫かっ!?」
長谷部さんの体の背後にいたのは、今呼んできてと頼んだばかりの山姥切さんだった。