第10章 ◆酔いの告白★★★☆☆
主の体は背後から抱き締める長谷部の腕に収まり、面前の山姥切もこれにはポカンと口を開けていた。
突然のことに、ギャラリーはざわつき始める。
宴会場の中心で長谷部が主を抱き締めているのは、あまりにも驚きの光景だった。
「待って長谷部くん! ごめん主! 僕たちがちょっと飲ませすぎちゃったんだよ!」
慌ててフォローにやってきたのは燭台切。
彼の言葉どおり、鶴丸や三日月たちに強い酒を飲まされてしまった長谷部はベロベロに酔っていた。
長谷部の気持ちに薄々勘づいており、影ながら応援していた燭台切は、これはまずいと長谷部の腕の中から主を助け出そうと手を挟む。
しかし長谷部がそれを弾いた。
「何するんだ燭台切。俺の主に触るな」
「はははは…酔ってるねぇ長谷部くん…」
あちゃーと頭を押さえながら長谷部に対応する燭台切は、腕の中にいる主の顔色をうかがった。
もちろん素面の彼女は、真っ赤になって大人しくしてなっている。
「主、ごめんねぇ…長谷部くん酔ってて変なこと言ってるけど、気にしないであげて」
「はいっ、分かってますっ! …酔ってるんですよねっ、大丈夫ですっ…」
そうは言いつつ、「俺の主」などと言われドキドキが止まらない様子。
鶴丸は高笑い、三日月は笑みを浮かべ、なんとなく気付いている一期もおろおろしながらその様子を見ている。
山姥切も口を挟めない。
燭台切は、普段の長谷部がこんな形で告白などしたくないだろうことを知っていた。
そのため、諦めず彼を落ち着かせるよう試みた。
「ちょっと酔いすぎだから、長谷部くんもう部屋に戻ろう。ほら、主にも迷惑かけちゃうから」
差し出された手。
虚ろな目をした酔いどれ長谷部は、彼のそんな優しさには気づかず反抗を続けた。
「…燭台切。さては貴様…俺から主を奪うつもりだろう。主は俺のものだ」
主はさらに深く、長谷部の腕の中に押し込められる。