第10章 ◆酔いの告白★★★☆☆
「……俺を当て馬に使うな」
酒を受けながら山姥切が呟いた。
白い布から鋭くも丸い目を覗かせている。
「違いますよっ。山姥切さんともちゃんと話しておきたかったんです。この間…その、変なところを見られちゃったから…」
「そうだな。あんたはあれから何も話そうとしなかったしな。…言っとくが、あのときはどう見てもあんたと長谷部が寝所を共にしているようにしか見えなかったぞ。恋仲になった様子もないし、長谷部に手篭めにされているのかと」
「そんな…」
「分かってる。長谷部はそういうことはしないだろ。誤解ならちゃんと説明しろ」
主が相手だとよく喋る山姥切に諭され、彼女は頷いた。
実は、主は前々から考えていた。山姥切にだけは、夜伽のことを話そうと。
「…あのときしていたことは、誤解じゃありません」
「何?」
「私と長谷部さんは恋仲ではありませんが…ときどきそういうことをします」
「なんだと」
目を鋭くした山姥切は、向こうにいる長谷部のことを睨もうとした。
主は彼の布を掴んで、それを止める。
「待って下さい。長谷部さんは悪くないんです」
「意味が分からない。ちゃんと説明しろ」
「実は、政府から指示が出ているんです。近侍と夜伽をして、御霊をもらうように…って。山姥切さんもご存知のとおり、私は長谷部さんが好きなので構わないのですが…長谷部さんにはご迷惑をかけている状態です」
主が恥ずかしそうに身を縮ませると、驚いていた山姥切も「そうだったのか…」ととりあえず同調する。
しかし刺激の強い話に、彼も顔が赤くなり、声が小さくなっていく。
「…なんでまたそんな指示が出るんだ」
「なんでも、審神者の力が弱まっているんですって。他の本丸は苦戦しているらしいのですが、私は幸運だったんです…好きな人がお相手なんですから」
主は、遠くの席にいる長谷部に目をやった。
ちょうど鶴丸と賑やかな言い合いをしているところで目は合わないが、その姿を熱い眼差しで見つめた。
そんな彼女に、山姥切もため息をつく。