第2章 ◆耳元で愛を ★★☆☆☆
「……主、目を閉じていてください」
「は、はい……」
彼女は素直に目を閉じた。
(ああ、主、可愛い…今すぐ俺のものにしてしまいたい…)
長谷部は、自分と向き合って無防備に目を閉じている彼女に、本当は今すぐ口付けをして、抵抗する間も与えずに押し倒してしまいたくなった。
しかしそれをぐっとこらえ、許されている彼女の耳のみを目に据える。
一度深呼吸をしたあと、長谷部はそこに顔を近づけ、優しく口の中に含んだ。
「えっ…! ひゃぁ…」
唇をつけたとたん、彼女の体は傾き、一旦耳は唇から離れる。
しかし長谷部は止められなかった。
逃げる彼女の耳を追いかけ、再びそこに唇をつける。
「は、長谷部さんっ…あ、あの…!」
「主っ…愛撫とは、こういったことも含みますので…」
彼女は意図せず、傾くままに布団に倒れこみ、長谷部もそれを追ったがために彼女を押し倒す形となっていた。
長谷部はハッとしてそれに気づいたが、しかし唇を離すことはできなかった。
「主、あるじっ… 」
「んっ…んん…長谷部、さ、…あ…」
彼女の表情は、嫌がっているものではなく、気持ちいいということを全く隠せていなかった。