第8章 ◆媚薬の誘い ★★★☆☆
…今、呆れられた?
軽い男に気を許す女性、って…。もしかして軽い女だと思われちゃったのかな。
違うのに…。
私は長谷部さんのことしか考えられないし、その他の男の人は何とも思ってない。
正直、何とも思ってないから無防備なことをしてしまったのだし。
「長谷部さんっ、待って」
言い訳になるかもしれないけど、それだけは分かってほしくて、先に商品棚にいた長谷部さんの隣に割り込んだ。
「主…どうしましたか?」
「私のこと…軽い女だと思ってますか…?」
ずばり聞くと、長谷部さんは困った顔をした。
「申し訳ありません、失礼な言い方をしました。ただ、あまり気安い男に心を許さないでいただきたくて、お諌めしただけです。…決して主が軽いなど、そんなことは思っておりません」
「すみません…私も、たしかに軽はずみでした。長谷部さんが隣にいるから、すっかり安心してしまって…。本当です、長谷部さん以外には、気を許したり、ましてや体に触れさせるようなことはしないつもりです。長谷部さんだけです」
あれ…少し、恥ずかしいこと言っちゃったかな。
長谷部さんも言葉に詰まってる。
「主…それは…」
──ヒュッ
すると背後から矢が飛んできて、陳列されている商品の巻物に突き刺さった。
私も長谷部さんも肩が揺れたが、すぐに矢が消えたため、これは政府からの矢文だと分かった。
…というか、今!?
ここ、本丸の外なのに…!
「長谷部さん…どうしましょう」
「何故こんなところにまで矢文が…」
動揺しても解決せず、長谷部さんは仕方なくひらひらと落ちていく文を拾い、私に見えるように開いていく。
『近侍は審神者の胸を愛撫せよ』
胸…!?
私は無意識に胸元で重なっている襟を握りしめていた。
胸って言われたって…ここは万屋の中だから、胸なんて出せないよ…。
万屋から出ても、街中は人が多いし…。