第8章 ◆媚薬の誘い ★★★☆☆
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朝餉が終わり、長谷部さんと万屋へとやって来た。
厳しい任務に備え、お守りを買い足すためである。
万屋は私たち以外にも、他の本丸の審神者が近侍を連れてやって来ていた。
「あれ? あなたは、先日の?」
「あ…!」
声をかけてくれたのは、以前、演練でお相手をした本丸の審神者さんで、私と同じくらい若い男の人だ。近侍には薬研さんを連れている。
「こんにちは。偶然ですね」
私が会釈をすると、審神者さんはこちらへ近寄ってきた。
長谷部さんは少し彼を警戒しているのか、私のすぐ横についた。
「ええ。この間はお世話になりました。とてもいい勝負になったので、ゆっくりお話がしたいと思っていたんですよ」
「ありがとうございます。私もです」
社交辞令として同調したつもりだったけど、審神者さんは嬉しそうに、さらに話を続けてきた。
できれば、長谷部さんを付き合わせてしまっているから、長話は避けたいんだけどな…。
「あなたも薬味饅頭を買いに来たのですか?」
「薬味饅頭?」
まったく目的にないものを言われ、知らなかったため首を傾げた。
すると、審神者さんはもっていた風呂敷から、笹の葉にくるまれた饅頭を私へとくれた。
「これは……?」
「今、期間限定で売られている饅頭ですよ。僕の分で売り切れになってしまったので、一つ差し上げます」
「まあ……。いいんですか? ありがとうございます」
「効能はそれぞれ違います。体力回復であったり、能力向上であったり。食べてからしか分かりません。まあ、お楽しみ饅頭のようなものですね」
「へえ……楽しみです」
「で、どうです? これから茶屋にでも」
「えっ…」