第8章 ◆媚薬の誘い ★★★☆☆
優しく触れるだけの口づけをされて、夢見心地でそれに従った。
何だか今までと違う…。
そうか、部屋が明るいからかもしれない。よく考えたら、朝に口づけをするのは初めてだ。
─ちゅ……─
長谷部さんはなかなか唇を離さないし、私も、いつ終わりにするべきかよく分からない。
「…主…」
「…ん…」
舌も入ってくる。
とりあえず、私も真似して絡ませてみた。
─ちゅぅ…ちゅぱ…─
何度か角度を変えてみる。
政府の求めている口づけとはどれくらいのものなのかよく分からなくて、できるだけ深い口づけをした。
「…これで大丈夫でしょうか」
長谷部さんが不安そうに聞いてきたので、私も、
「た…多分」
と答えた。
そして念のため、最後にもう一度舌を絡ませる口づけをしてから、それを終わりにした。
「……えぇと、それでは主。朝餉に参りましょうか。その後は万屋へ行く予定でしたよね」
「あ、はい、そうです。色々と必要なものがあるので」
「ではお供します。外で待っておりますので、着替えたらお呼びください」
「はい…ありがとうございます」
そう言って、何事もなかったかのように長谷部さんは外へ出た。
私も、何事もなかったかのように着替えを始める。
…でも、胸のドキドキは止まらなかった。
だっていつも目覚めるときは挨拶だけなのに、今日は口づけをしてもらえるなんて…。
なんだか得した気分…。
おはようのチュウ、みたいで…。
そんな夢見心地のまま、私は準備を始めるのだった。