第8章 ◆媚薬の誘い ★★★☆☆
◆◆◆◆
「…ん…」
重い瞼の隙間から、光が入ってきた。
ぼんやりと見えてくる天井は、いつもの部屋と同じもの。
手足は重くて動かない。
…私、何してたんだっけ…?
「…主。お目覚めですか」
長谷部さん…?
「…っ、え、私っ…」
体を起こすと、私は自室の布団に寝ていて、その傍らには長谷部さんが整った衣服で座っていた。
障子の外は明るい。小鳥のさえずりも聞こえている。
「まだ休んでいて大丈夫ですよ。昨夜、ご無理をさせてしまったので」
昨夜は、たしか…。
夜伽の日で、二人で湯殿へ行って…。
そこで長谷部さんにされたことを思い出し、私はまた体が熱くなってきた。
体が快感に飲まれたことは覚えてる。その後、すぐに意識が遠くなって……そっか、そこで気を失ってしまったんだ。
気絶しちゃうなんて…恥ずかしいな…。
そこまで思い出して、私は再度、自分の姿を見た。
浴衣が綺麗に着付けられている。
…結び方、私のじゃない。
「…っ!?」
待って待って! 湯殿で気を失って、今ここにいるってことは…
「…お目覚めにならなかったので、俺が浴衣を着せて、ここへ運ばせていただきました」
「え…えっ…あっ…」
思わず布団を顔まで引き上げた。
素っ裸のまま、長谷部さんに着付けをしてもらったってこと…!? 気を失ったまま!?
そんなぁー…
「す、すみませんっ…やだ…恥ずかしい…」
「いえ、俺こそ申し訳ありません。無礼だとは思ったのですが、人を呼ぶわけにはいかなかったので…」
「そ、そうですよね…! 長谷部さんは悪くないです…私こそ、お見苦しいものを見せてしまって…」
それを言うなら裸は昨夜は一晩中見られていたし、裸どころかもう体の中まで覗かれたのではないかというほどなのだけど。
でも、また別で、気絶した私の着替えをさせてしまったのはそれはそれで恥ずかしい。
「まさか。主はどこを見ても綺麗ですよ」
「ど、どこまで見ました?」
「…………昨夜は全部見せていただいたと思います。覚えてらっしゃるでしょう?」
「…はい…」
少し意地悪な表情の長谷部さん。
私は恥ずかしくて、さらに布団に沈んだ。