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道の交わる時

第10章 過去の記憶


「全然大丈夫じゃない」
「え?」
「だってそれって、他の加州清光でしょ?それじゃあ、全然ダメじゃん」
「...」
戸惑う加州に対してがいう。
「わかった?」
「え、あ、はい」
「なら良し」
加州は可笑しそうに笑った。
「え、なに?」
「ほんっと、変」

それか、二人は様々な話をした。
加州の前の主の事や、一緒にいた刀の事、の生い立ち。
家族を亡くした事を伝えると、一瞬辛そうな目をしたが、言った。
「ま、心配するなよ、俺だけはずっとそばに居てやるからさ」
「...ほんと?」
「あぁ。だーかーら、可愛がったよね?」
「...ふふふ。うん」
がそう言うと、加州は嬉しそうに笑った。
その顔が、歪むー



「...くん、主君!!」
顔のすぐ側に、前田藤四郎がいた。
前田は、にとって初めて鍛刀した刀だ。女性の寝所によくいた事があり、気遣いがとても細やかである。それらの事から、の寝所の外で時々、夜警をしているようだ。
刀剣男士達には、この本丸が安全な場所である事を伝えている。しかし、刀の性なのか、彼らは時々夜回りをする。あの、酒が命の次郎太刀でさえもだ。
だからは彼らの好きにさせている。睡眠不足になるようなら止めるつもりだが、今のところそのようなことはない。
「あ...まえ、だ?」
自分でも声がかすれているのがわかる。今のは、夢だったのか。
「大丈夫ですか?」
前田が心配そうに覗き込む。
外はまだ暗いのか、前田の顔はぼんやりとしか見えない。
「うん...夢をね、見ていたの...」
少し前の夢はとても鮮明で。あの日から加州が居てくれた。どんな時も彼にばかり頼っていた。いつも第一部隊の隊長は彼だった。時々、怪我を追ってはくるが、それでも必ず帰ってきてくれた。
「...嘘つき」
「...え?」
「絶対帰ってくるって言ってたのに。嘘つき」

そう言って、腕で目元を覆ったに、前田はかける言葉が見つからなかった。
彼がどんな経緯で消息を絶ったのかはわかるない。しかし、敵に回るようであれば切るのはの役目だ。その覚悟はない。
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