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道の交わる時

第7章 ミステリートレイン


「あぁ、あの時、君を見ていた。もっとも、顔は見えなかったが。先日、それからあの時、君が付けていたその指輪、スコッチがずっとつけていたものだ」
「...そう、スコッチって呼ばれてたの...」
は言った。
「スコッチ、あの日死んだ男は、私の兄だよ」
「ほぅ、君はなぜあそこにいたんだ?むしろどうやって、あそこに来た?」
「...あそこにいたのは、兄の死因を知りたかったから。そして、私のすべきことだったから」
「すべきこと?」
沖屋、もとい赤井の問いに、は首を横に振った。
「彼の死因を知りたかったというのは?」
「兄の死因について、私が知らされていたのは、交通事故のみ。でも、遺体安置室の中で見た兄はお世辞でも交通事故って感じじゃなかったから」
「なるほど...」
それきり黙った赤井に対して今度はが質問をした。
「それで?あなたが変装しているのはなぜ?どうして私に本当の姿を晒したの?」
「俺もあの坊やと同じ、組織を追う者さ。訳あって死んだことにしているんだ。君に姿を晒したのは、そうだな、坊やから君の事を聞いていたからな。姿を晒しても問題ないと考えた」
「その組織って、お兄ちゃんも関係ある?」
「俺が潜入捜査をしている時、彼もまた組織にいた。おそらく、同じように潜入していたのだろうな」
「...ふーんそっか」
自ら聞いた割に気の無い返事をしたに赤井は言った。
「気は済んだかい?お嬢さん」
「うん、まぁ、まさかそこまでとんでもないことやってるとは思わなかったけど」
「君のお兄さんはこの国の為に頑張っていたさ」
赤井の言葉には俯いた。
「この国のため、か...」
「?」
「ううん、なんでもない。それより、私より先に妹に教えてあげなくて良いの?」
「妹?」
「世良さん。ミステリートレインの時にシュウ兄って呼んでたよ。あなたの変装した誰かにね」
「ほぅ!よく変装だと見破ったな」
「顔は同じでも中身が違う」
がベルモットの変装を見破ったことに赤井は感嘆したが、は至って冷静に言った。
「その歳で、その観察眼か...君が家族を亡くしてから何があったのか非常に興味があるな」
「...そこまで知ってるの?」
「あぁ、一応調べたさ。全てではないがな」
「悪趣味というべきか、はっきり言って気持ち悪い」
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