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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第7章 笑顔



「奏」
「はい、何ですか? 若頭」

 スーツを着た男へと近寄る。
 あの日、奏が連れられたのは、地元では割と有名な“葛城組”というヤクザの屋敷だった。父親が案の定、借金を抱えており、返済が滞り、担保にしていた娘を置いて、夜逃げしたのだ。それをしった、若頭――葛城信也が、何を思ったのか、奏を男装させ、舎弟としたのだ。
 それからは、信也の傍で身の回りの世話や、雑用をこなす日々を送りながら、学校に通っている。高校ぐらいは、出ておいたほうがいいといわれ、学費は、身の回りの世話で免除という形になっている。

「街に行くから、お前も来い」
「はい、わかりました、若頭」

 若頭の後ろをついていき、黒のクラウンに乗り込む。どこへ行くにしても信也は、奏を連れて行った。数ヶ月前に会ってから、離れた日は一度もない。
 奏は、環境のせいか、体中に痣があり、誰にでも分け隔てなく接する。だが、心から笑っているそぶりは見せていなかった。どうにかして笑わせようと、猫カフェや遊園地、商店街へ連れて行ったり、アクセサリーなどのプレゼントをしてみたが、どうして自分なんかにそんな事をしてくれるのか……という意識があり、不思議がるものの、心から喜ぶことが無い。そして、決して、自分から人に話しかけはしない。
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