第6章 監禁
「今日はね、プレゼントを買ってきたんだ。」
「いりません」
せめてもの抵抗のつもりだ。食事やゲームなど、与えられてはいるが、流石に服は着たいし、外に出たい。ずっとここに居ても、嬉しくない。自由が欲しい。何もいらないから、解放して欲しい。そう、懇願しても、聞き入れてもらえないことは、もう、身にしみて理解している。それでも、願わずにはいられない。
私は、行方不明者なのだろうか? 死亡した事になっているのだろうか? 会社は退職願をここで書かされたので、もう、席はないのだろう。
「そう言わないで、受け取って? 絶対似合うから」
そう言って男性が取り出したのは、猿轡と手錠。それを見た瞬間、体が強張った。
「本当に、変態ですねっ……!」
「そうだね。否定はしないよ。でも、覚えておいた方がいい。今の反応が、私はとても好きなんだ」
「っ……!」
思わず後退るが、壁に背中が当たり、男性は逃げられないよう、両脇の壁に手を当てた。徐々に顔が近付いてくるのを、そっぽを向いて抵抗する。
「そういう抵抗も、喜ばせるだけだって、教えたでしょう?」
耳元で艶やかな声が響く。
「いつまで、私をここに置いておくんですか? 何で私なんですか?」
「そうだね……君が本当の意味で、抵抗をやめてくれるなら、いつでも部屋から出してあげる。スマホもパソコンも買ってあげる。服やアクセサリー、化粧品、バッグ。何でも買ってあげる。どこへだって連れて行ってあげる。君の全てを私にくれるのなら……この命だってあげるよ。でも、君が私の物になってくれないなら、ずっとここで、守ってあげる。仕事もしなくていいし、食事もあげるけど……」
恍惚とした笑みから、急に真顔になり、瞳が暗く澱んだ。そして、両手を掴まれ、頭上で手錠をはめられた。逃げられない。この人から、逃げることが許されない。