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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第5章 不良


「!?!?!?」
 目が覚めて、即座に声にならない悲鳴をあげていた。
 よく遊びに来る部屋のベッドで、隣には、耳を塞いだ信也の姿。所謂、彼シャツという名の姿をした私。
「おはよう、奏、体、変なところある? 痣は……どうしようもないんだけどさ……」
 蘇る夢と、記憶。穢れた体が、綺麗になっている事実。彼シャツ。手首や太もも、足首に残る紐の跡。その上に重なるよう無数に付けられた、赤く小さな跡。部屋の窓に映る自分の姿。ちらほら見える首筋の赤い跡。
「し、下着……欲しい……かな……」
 搾り出した言葉は、これだった。なんでだよ。あるわけないじゃん。
「さすがに、お前の部屋に入るわけにはいかないだろ」
 ごもっとも、そうですね。
「なぁ」
「なに?」
 顔を向かい合わせた瞬間、私は、信也の腕の中に居た。暖かいを通り越して、少し熱い体温。鍛えられた広くて硬い胸板。無駄な肉もなく、鍛えられた腕。夢にまで見た、見続けた腕の中。
「ずっと、バイトして、金稼いでるんだ……」
「え?」
「学校に通えてるのも、お前の傍にこうして居れるのも、お前の両親が、俺の後見人として、お金を出してくれてるからだろ。それに、応えたくて。お前の傍に居たくて、バイトしたお金を、ご両親に受け取ってもらってる。ずっと。高校に入ってから。一日バイトして、合間に、お前と同じ大学に行けるように勉強もして。放課後は、空き教室で、授業をしてもらってるんだ。境遇とか、考えてもらってて。すごい、恵まれてて」
「うん……」
「バイトの休憩時間とかに、偶々、動物をいじめてる連中やら、俗に言う親父狩りってやつをしてる連中を、片っ端から止めに入ってたら……待ち伏せとか、尾行されてる時が増えて。離れたくないけど、お前を巻き込む訳にはいかないから、我慢して……離れて。でも、結局こんなことになって。図書室でお前に会える時間が、一日の中で、一番大切で。幸せで。一緒に帰りたいのに、帰れなくて……お前の、手料理、食べたくて……浮かれてて……お前からLiMEが来たと思ったら、呼び出しと、お前の……現状の写真が送られてきて……それから……」
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