第4章 ポーカー
「初めまして。葛城信也です。ポーカーゲームなら腕に覚えがあります。よろしくお願いします」
朝。いつものように、出勤したら、なぜか、見覚えがある顔が、上司になっていた。……ナンダコレ。夢かな? 夢でいいよね。うん。
「職場に慣れるまで、大変だろうから、桐生君に教えてもらうといいよ。彼女、うちのエースだから」
そこで、私を指名しないでほしいなぁ。はぁ……。切り替えよう。どうせ、バレやしない。
「初めまして。桐生奏です。エースと呼ばれる程の実力はまだ、だとは思いますが、これからよろしくお願いいたします。葛城主任」
私は、営業スマイルで右手を差し出し、握手をする。間違いない。昨夜、というか、数時間前にカジノに来た客だ。どうして、昼の地味なOL業でも、会ってしまうのだろうか……。あのカジノ、こんな弱小企業で行けるほど安くないんだけどな。
そうして、奇妙な日々が始まった。
「葛城主任。頼まれていた資料の用意が完了致しました」
「ありがとう。そこに置いてくれる?」
「はい。次は何かしますか?」
「じゃあ、来週のプレゼンで使う資料の場所を教えてもらえる?」
「いいですけど……私がまとめておきましょうか?」
「いや、頼ってばかりも申し訳ないから……」
「気にしないでください。自分の仕事は、今日の分は既に終わらせてありますので」