第4章 ポーカー
「まず、皆様にカードを二枚ずつ、裏を向けた状態で、配ってください。順番や配り方は、貴方様のご気分で、お好きなように。」
九番の方が、ルールを知らない割に、見事な手さばきでカードを配る。全員に行き渡ったのを確認してから、息を吸い、高らかに宣言した。
「それでは、ただいまより、ゲームスタートです」
「五枚配るのではないのか?」
「はい。この二枚のカードを、ホールカード、または、ポケットカード、と呼びます。ゲームにおいてプレイヤー様にお一人ずつに配られるカードは、この二枚のみでございます。決して、他のプレイヤー様には見せられません様、ご注意願います。これは、とても、大切なカードです」
そして、賭けが始まる。
「チェック」
ここで、二名の男性が、ゲームから降りた。見慣れた光景。
「ベット」
次々出されるチップ。そして、八番の名札を付けた男性まで、賭けが終わる。最初のゲームだからか、様子見なのだろう。チップは二枚から増えていない。
「同等のチップを賭けるか、レイズ、と言い、これよりも多くの額を賭けるかを選択出来ます。いかがなさいますか?」
「レイズ」
強気なのか、強がりなのか、興味本位か。私には分からないが、九番の男性は、手持ちの半分のチップを賭けた。どういうつもりなのだろう……。やけくそ、には見えない。でも、潔くて、嫌いじゃない。
私はいつの間にか、少しだけ、笑っていた。