第4章 ポーカー
いつからだろう。思った以上に、この世界は生き難い。
私は、いつも通り、カードをシャッフルしている。目の前には、十人の男。有名な政治家や、テレビでも見たことがある大富豪が、ギラギラとした目つきでカードを見つめていた。
私は、裏向きにしたカードを、一人に一枚ずつカードを滑らせるようにして渡す。
ここは、カジノ。そして、私はそこの店員をしている。制服も可愛いし、何より時給がいい。どうせ、働くなら、短時間で高時給。そうやって決めた今のバイト。かれこれ数年はやっているから、客のあしらい方、カードの扱い、ドリンクの作り方まで、手馴れてきたんじゃないか、と自負している。
全員が受け取ったカードを提示し、一番強い「K」のカードを持つ男性へ、ディーラーボタンと呼ばれるチップを渡す。これで、私の最初の仕事が終わる。
「ディーラーボタンは、九番の方です。これより、私は、只の店員でございます。何か御用がございましたら、何なりとお申し付けください」
「ちょっといいかな」
「はい。ただいま」
一礼して、呼んだ客へと足を運ぶ。九番の名札を付けた見慣れない男性。おそらく、カジノに来るのが初の客。佇まいや仕種に気品があるので、私とは違って、お金には困ってないのだろう。
「どういたしましたか?」
「ルールを教えてくれないか」
「かしこまりました。当カジノのポーカーゲームは、テキサスホールデムのルールとなっております。まず、今お渡ししたチップは、ディーラーボタン、又は、ボタン、と呼ばれる物でございます。」
ディーラーボタンを受け取った人物が、そのゲームのディーラーとなり、カードを配る役目を担います。店員が配ったら、チップ等で買収の可能性がある為、公平にする為、当カジノでも採用しているルール。