第3章 ひと時
「それはそうと、ちょっと近いから離れて」
あれ?
葛城の雰囲気が変わった……?
顔から笑顔が消えて、 ゆっくり離れる。
気付けば目的の駅についていた。
葛城が少し気になるけど、乗り過ごしたらいけないし、軽く挨拶して学校に向かう。
葛城の別れ際の顔が何度もちらついて授業どころじゃなかった。
ようやく一日が終わる。
帰ったらゲームして気分紛らわそう。
そう決めて私は駅へと向かった。
今週は掃除当番じゃないし、早く帰れる。
意気揚々と電車に乗りいつものように壁を背に携帯を開く。
今日はちょっと空いてるし、鞄は床に置いちゃおう。
そういえば周りは葛城と同じ高校の人ばかりだな。
あそこの冬服可愛いから好きなんだよね。
夏服がすっごい可愛くないけど……。
だから夏服は着ないとか、言ってたっけな葛城。
うちは冷暖房無いからそういうのは無理だけどね。
ちょっとだけ後悔。
もし、葛城と同じ高校行ってたら、友達出来たのかな。
なーんて。
「ねぇ、君。ちょっと俺たちと良いことしない?」
でも、あそこの高校は不良のたまり場として有名。
相手がどんな可愛い子かは知らないけれど、こんな場所でナンパとか普通しないでしょ。