第3章 ひと時
「……っ!」
さっきの揺れのせいで体制を崩していた私は、知らない間に足を開いていた。
足の間に痴漢の手が滑り込んでくる。
それはゆっくりと上へのぼってきた。
思わず足を閉じて葛城の服を握りしめる。
「おいおい、足開いた方がバランス取れるぞ」
「だ……だって……手が」
「その手だって抜くに抜けないだろ」
あっ……そうか……
私は恐る恐る足を開く。
途端に葛城がいきなり私を壁に押し付けた。
どうやら後ろの人に押されたらしく、後ろの人に頭を下げられている。
でも、これ、どうしよう。
さっきから太ももを触っていた手はなくなったけど、足の間に葛城の右足が入り込んでる。
細長くてごつごつしてる手が私の顔の横にあった。
い、いろいろ……近い。
葛城は昔からよくモテるくらい顔は整っているし、料理とか家事全般出来る。
性格は明るいし話すのも上手い。
女の子の扱いも上手いしね。
ただ、やたら童貞っていうのを強調してた。
俺は本当に好きな奴としかやりたくないんだーって。
チャラ男っぽいのに意外だな。
「お前、結構失礼な事思ってるだろ」
「思ってないよ。考えてる」
気付けば痴漢にあってた恐怖は和らいでいた。