第3章 ひと時
……?
今、何か、お尻に当たった?
まあ、この時間だし、今日は結構混んでるから鞄とかかな。
さすがに痴漢は無いと思うし。
こんな田舎で痴漢いたら逆にびっくりする。
「っ!?」
違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う!
明らかに手だ。
ど、どうしたらいいの!?
満員電車の中で逃げ場なんか無いし、次の駅まで10分もある。
目的地じゃないけど次の駅で降りなきゃ。
こんな田舎で痴漢がいるとは思わなかった。
そ、そうだ!
声、声出せばいいんだ。
声、声、声……助け……助け……!
「だ……だれ……だ、れ……か」
声が……出ない……
唇が震えて、掠れる。
それを見てるのか、お尻を揉み始めた。
抵抗しなきゃいけないのに、体が動かない。