第2章 罠
「信也」
お湯の温度を調整している信也に声をかける。
信也は手を止めて振り返った。
「どうした?」
――もう、確かめてしまおう……
信也がどう思っていても構わない。
この気持ちが消せずにどんどん大きくなるのなら、いっその事聞いてしまおう。
そう、思った。
お嬢様としての仮面は先ほど捨てたのだ。
どんな答えが返ってこようが、自分専属の執事であるという関係は変わらない。
深呼吸をして、震える唇から言葉を紡いだ。
「信也、私の事、好き?」
「なっ!?」
信也が固まった。
驚愕の表情を浮かべたまま。
しばらくの間があったあと、信也は腕で顔を半分隠した。
わずかに見える顔は赤くなっている。
「て……照れてる……の……?」
思い切って聞いてみた。