第1章 躾
「奏様! あのお綺麗な殿方は新しい執事様ですの?」
「ええ。葛城ですわ」
「まあ! 葛城様とおっしゃるのですね!」
元ジャニーズなだけあって、女性陣の目を引く執事の葛城。
質問に最低限の事だけ答え自分の席へ座る。
窓側の最後尾。
父親である社長のコネを使い、この場所を陣取っている。
使える物は使う、というのが彼女の流儀。
のんびりと窓の外を眺めながら、現在攻略中のゲームを頭に浮かべる。
そうしているうちにチャイムが鳴った。
「はい! 今から中間テストをお返し致します」
教室がざわつく。
ゲームに熱中している奏だが、成績は学年首位。
今回のテストも難無くこなした……つもりでいた。
「桐生様」
数学のテストで、彼女は人生初の赤点を取ったのだ。
その日の授業は全く耳に入ってこなかった。
一問12.5点の8問。
どうやら公式を1カ所覚え間違いしていたらしい。
8問中5問正解。
(ど、どーしよ……お父様の耳に入ったら、大変な事になる……!
ゲームの取り上げ所じゃない! 部屋から1歩も出してもらえない!
しかも数学って言ったらゲーム制作にも関わる教科!
だめだ、死んじゃう……死んじゃうぅううううっ)
「せ、先生! 大変ですわ! 奏様の頭からお湯気が!」