第11章 出会いと思い
「奏お嬢様」
黒い執事服に身を包み、白い手袋、黒縁の眼鏡をかけた専属執事がそこにいた。葛城信也。舞踏会にて、奏へ手を差し伸べた張本人。それが、今、執事としてそこにいる。
「そろそろ休憩に致しましょう。慣れないダンスの稽古で、お疲れでしょうし」
「そんなことないわ。続けて?」
「焦らなくても大丈夫ですよ……お前が、一人で夜遅くまで練習してるのを知らないとでも思ってるのか?」
眼鏡とネクタイを外し、奏を抱き寄せ、そのままベッドへと寝かせる。懐から消毒液とガーゼを取り出し、奏の足を持ち上げ、靴を脱がせると、傷だらけの足を手当てし始めた。
あれ以来やっていなかった舞踏会に再び呼ばれてしまい、慌てて練習をしていたのだが、間に合いそうも無く、寝る間も惜しんで練習していた。日に日に傷が増えていく足に、葛城は気付いていたらしい。
本当に、適わない。赤点を取ったときも、同級生に襲われたときも、初めての舞踏会のときも。いつだって、助けてくれるのが、彼だ。今も、手当てをしてくれている。
「ねぇ……葛城は、どうして、いつも私を助けてくれるの?」
「……当たり前だろ。好きな女を助けたい、守りたいって思うのが、男だよ」
「っ!」
恋人同士になったのかは分からないが、先日、お互いに気持ちを伝え合ったばかり。やはり、気持ちを伝えられるのは、恥ずかしい。でも、知りたいと思う。触れたいと思う。もっともっと、と欲張ってしまう。これは、なんだろう。この気持ちを、何て言うんだろう。