第9章 独占欲
「今日は分からなかった所はない?」
「今日のは、ほとんどが先日の復習みたいな内容ですから、苦戦しなかったですよ」
「流石だね。この出来なら、就職試験の筆記は、無問題ってところかしら」
「出席日数?」
「そうだね。出席日数で落とされる可能性は、割と高いかな。まあ、ぶっちゃけ、フリーターでも何十万と稼ぐ人も居るから、そこまで気負う必要は無いけどね」
「今時フリーターでもいい、て言う教師、あんまり居ないですよ」
「そうね。私も言われたことは無いよ。でも、出席日数をクリア出来れば、桐生君なら東大や京大、早稲田も夢ではない成績だと、私は思ってるよ」
こうやって未来の話をさせてくれるまでになったのは、一週間前だ。
「先生は、やっぱり、来て欲しいんですか?」
そして、毎日聞かれる。私は、中身を飲み干したティーカップをテーブルに置くと、素直に頷く。
「貴方が決める事だから、無理は言わないけどね」
「……知ってます。でも、先生がどうしても、て言うなら、考えますよ」
そんな事をしない、て知ってて言っている。この子は本当に頭がいい。だからこそ、教室という檻は合わないんだろう。
でも、今日は違った。