第7章 殺しの任務
私はスコッチが運転する車に乗って移動していた。今日はいよいよ殺しの任務だった。私の隣には、バーボンが座っている。助手席に座ればいいのに。スコッチは空気が重いことにそろそろ耐えきれない様子だ。
「…分かってるのか?」
そんな中、バーボンが私に問いかけた。私は頷く。
「ターゲットは30代男性。組織のお金を奪って逃走中。空港で高飛びをするところを、バーボンたちが追い詰めて、私が屋上で仕留める」
あってる?と聞けば、ため息をつきながら頭を抱えるバーボン。スコッチはそんな私を心配そうに運転席から見ている。
「大丈夫だよ。バーボンと特訓したし、それにじゃーん!!見て!銃も持ってるし!!」
私が自慢そうにカルバドスから貰った銃を取り出すと、さらに複雑そうな顔をするスコッチ。バーボンが口を開く。
「僕は殺し方は教えていない。基本的な防御術を教えたんだ。…今からでも遅くない。殺すのはほかの人に……」
その言葉に私は首を振った。バーボンも頷いているスコッチもジンを甘く見すぎだ。
「ジンがどこかで見てる。私が殺さなかったら、どちらにしろ失敗と見なされるよ」
私の言葉に苦い顔をする2人。私は微笑んだ。
「大丈夫。私、ちゃんと殺せるよ。じゃなきゃ、私の指導係をしてくれたバーボンにも迷惑がかかるし………」
「そういうことを言ってるんじゃない!!!」
私は体を震わせた。いつも冷静なバーボンがここまで声を荒らげているのは初めてだった。
「…………そういうことを…言ってるんじゃ…」
どんどん消えていく声に、バーボンが悔しがっていることな今更ながら気づいた。それを見てスコッチも複雑な顔をさらに歪ませる。
「……2人がそんな顔することないのに」
私は思わず笑ってしまった。どうやら思っていた以上に、2人は優しいようだ。表に出さないだけで…いや出せないのか。
「…気にしないで。2人には迷惑かけないよ。…今まで優しくしてくれてありがとう」
ハッとこちらを見る2人。私は辛そうな顔をするバーボンの耳元にそっと囁いた。
「あの件だけど……もう考えなくていいかも。今まで困らせてごめんね。お母さんがいたらこんな感じかなって甘えちゃってたの」
そして、私は車を降りた。扉を閉める時、私の名を呼ぶバーボンの声が聞こえた気がした。