第15章 黒の組織とFBIと・・・私とジンとクソ親父
~誰かside~
「私の目的は、最初から変わってないよ。クソ親父を……赤井秀一を…原型を留めないくらいに殴ってやること」
そして、俺の首に腕を回したガキはふふっと笑った。
「私がクソ親父の元に行くって心配になったの? 私の場所はずっとここなのに…ジンのお馬鹿さん」
そう言いながら、俺の髪をゆっくりと撫でるガキは、俺の体が冷たくなっていることに気づき、慌ててタオルを取りに行く。無防備な背中…あの小さな生き物を殺すのは他愛のないことなのに…何故か俺は今まで殺さずに手元に置いていた。ガキがタオルで俺を包み、髪をふく。せっかく綺麗な髪持っているのに傷んじゃう…そう言いながら…
「うわっ!?」
腕一本で軽々抱えられるほどの小ささ…体を持ち上げるとガキは驚いたように目を丸くした。この距離で特に警戒も抵抗もせずに、きょとんと見上げてくるガキに、俺は口を開いた。
「…俺から離れようなんざ、無駄なことを考えるんじゃねぇぞ」
すると、腕の中にいるガキはふっと口角を緩ませた。
「了解、ジン。でも、私が貴方から離れようとする時なんて…私が貴方を庇って死ぬ時ぐらいだろうけどね」
そして、ガキは俺に擦り寄るように俺の肩に頭を置いた。ふと、出会った時の頃の姿が頭を過ぎ、俺は笑った。父親に復讐してやる…威勢のいいことを言っていたガキの今がこれか。哀れで小さく…強者に媚び売る生き物。だが、俺はこの生き物の温かさに惹かれていた。この温かさを喪うには惜しいと思うほどに。
「…ジン?」
ガキが甘ったるい声を出し、俺の頬を触る。すると、その手から胸が詰まるような幸福感が広がり、不足で冷え切っていた手足の末端まで血が通って暖かくなっていく…それを感じながら、俺はガキをベッドの上に放り投げた。俺らしくもねぇ考えだ…だが、このガキといるこの瞬間だけが、今の俺の生きている意味だと…そう思わずにはいられなかった。