第6章 私の初任務とあの人の存在
~別side~
突然だった。突然、俺はすごい力で、あの子から遠い場所に連れてこられた。俺は必死で抵抗した。
「く…そっ!! 誰だお前っ……邪魔をする……」
俺の言葉は男のしー…という声にかき消された。いや、その続きが出なくなったというのが正しい。男は長い髪を特に揺らしもせず、俺の方を鋭い目でじっと見ていたのだ。それは、明らかに殺気だった。
「……たった今、脱走したお姫様が眠りについたところだ。目を覚ませば、また面倒なことになる。だから、黙っていてくれないか?」
男は俺に拳銃らしきものを突きつけ、口元に指を当てて言った。俺は初めて命の危機を感じた。
「ただでさえ、お前のせいで回収が遅れたんだ。俺は時間のロスが嫌いでね」
ボキッ。骨の折れる音がし、その後痛みが俺を貫いた。俺が叫ぶ前に、俺の口にタオルがねじ込まれる。
「市民を守るための警官が、犯罪者の仲間入りとは…。君のような者がいて、日本の警察は誇り高いだろうな」
言葉の間にも、俺のもう片方の腕もおられ、俺は痛みでもがき苦しんだ。もうやめてくれという言葉は、発せられず、涎がダラダラと口から落ちる。
「二度と近づくな」
そして、俺の意識はなくなった。最後に見たのは、大きなライフルを担いで歩き出す男の姿だった。