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赤井さんちの一人娘

第2章 義理の父親が姿を消しまして


頃合いを見て、私はトラックを降りた。外に出ると肌に冷たい雫が落ちたのを感じ、雨が降っていることに気づいた。ここがどこだか分からないが、取り敢えず雨を防げる所へ行こう。この雨はすぐ止みそうだから、泊まれる場所はそれから探そう。そう思い、足を急いだ。あたりは雨が降っているからなのか、それとも夜が近づいているからなのかとても薄暗いし、人もいない。…………あまり治安がよくない所のようだ。ようやく見つけた軒下で、私は手で雫を払い除けた。少々の肌寒さを感じ、私は辺りを見渡した。しかし、見えるのは強くなり始めた雨粒と、暗い細道くらい。正直、お腹も減った。……いつもだったら、向こうから大きな傘をさしたあの人が迎えに………

「……そっか。もう迎えに来てくれる人…いないんだっけ」

………こうやって雨が降って帰れないでいた時、最初から知っていたかのようにあの人は迎えに来てくれたんだっけ。私の分の傘を持って、ズボンの裾が跳ねた泥で汚れるのも気にせず、いいと言ってるのにいつも来て………仕事大変なのに……ご飯も出来てるし………あーーーー!

「…………1人でも生きていけたはずなんだけどなぁ…」

私はぎゅっと心臓を潰されたような感覚がし、思わず膝をかかえて座り込んだ。これがどういうものなのか…私は考えたくなかった。そのことに触れてしまえば、どうしても考えてしまうから…。自分が置いて行かれたこと。まるで最初からいなかったように、私の手元にはあの人の物が何一つとしてない。最初から……私なんか気にしない存在だったのだろう。気まぐれで拾って、気まぐれに優しくして…そして気まぐれで捨てた。よくある話なのだろう。そうよくある話だ。

「………勝手に拾っといて、飽きたら捨てるって……だったら最初から…拾うなよ…クソ親父……」

普段あまり会話がない私たちだったが、たまに口喧嘩になることがあった。どっちも譲らず、大人気ないと思ったことは多々ある。私は思わず昔の名残からか口が悪くなることもあり、その度に注意された。それがまた腹ただしくて…そうだ。あんなやつ……こっちから願い下げだ。………あんなやつ
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