第2章 義理の父親が姿を消しまして
「うぇ…………うっ…うっ…」
堪えていたものがはち切れたように目から溢れ出た。こんなところで泣いている場合でないし、早く泊めてくれるところを探さないといけないことも分かってる。分かってるのに…止まらなかった。
「……やだよぉ……なんで……置いていかないで……お父さん……」
なんで置いていったの。なんで家を燃やしたの。なんで何も言ってくれなかったの。…なんで私を拾ったの、最初から捨てる気だったくせに。優しくしないでよ。いつも素っ気ないくせに、家に帰ってこない日もあったくせに。…でも、2日連続で開けたことなんてなかった。たまに部屋に入ってきて、寝た振りをした私の頭を撫でて……笑って……まるで本当のお父さんみたいだなって……。でも、もうあの日は戻ってこない。
「………………あの時……死んじゃえばよかった」
「じゃあ、今死ぬか?」
この雨で自分一人だと思っていた中での声だった。体が震え、それと共に力が入る。涙でぼやける目を慌てて擦り、顔を上げた。そこにいたのは1人の男だった。その男は雨の中傘もささず、長い髪を揺らして立っていた。黒い服をまとう姿は、施設で見た本の絵にあった死神のよう。男は私をじっと見ていた。
「親に捨てられて、ただ喚くガキなんざ、この世の中どこにでもいる。それで死ぬガキもな。ただ死ぬだけなら、殺してやろうか?」
その男は私に銃口を向けていた。男の目がぎらりと光る。私はヒュッと息を飲んだが、ふとそれでもいいかと思った。だって、行くあてのない私はたしかにこの男の言うとおり待つのは死だ。苦しまずにしねるなら………そっちの方が………