第6章 私の初任務とあの人の存在
~別side~
ジンが帰ってきた。予想より遥かに速い帰りだった。
「……ア…アニキ……お早いお着きで……」
「ガキはどこだ?」
ビクッと体を震わせるウォッカ。言いにくそうに小さな声で言う。
「あ…そのなずなは…その……」
「逃げ出したか」
ゾッとするほど低い声だった。ウォッカが慌てて、弁解をする。
「お、恐らく…少し外出してるだけかと………」
「あいつに外出なんて、許可した覚えはねぇ」
ガチャッと銃を取り出すジン。………何やってるんだ。ちらりと携帯を見るが、あの子を見つけたと連絡が来て以降、音沙汰がない。
「……てめぇは何をやってるバーボン」
こちらにも矛先が来た。僕はため息をついて、ウォッカの方を見た。
「…彼に頼まれたんですよ。探すのを手伝って欲しいと。そう慌てずともすぐに帰ってきますよ。彼女、ここからそう離れてない場所にいましたから」
「ほ、本当か!?」
ウォッカが下げていた顔をガバッと上げた。それはどこかホッとしている様子だった。ジンは舌打ちをしていた。
「ええ。目撃証言がありました。逃げるつもりだったら、とっくに街を離れてると思いますよ」
ジンは不機嫌そうにソファに座り、酒を飲んだ。
「回収してきましょうか?」
僕は気を利かせたというつもりでそう彼に提案した。その方が僕にも都合がよかったからだが。だが、彼は僕に銃を向け、睨んだ。
「焦らずとも帰ってくるんだろう? お前はとっとと任務の準備に戻れバーボン」
僕は心の中で舌打ちをしながら、では…と部屋を出ていく。部屋に戻ると、待ち望んでいた携帯が鳴る。しかし、電話から聞こえてきたのは、任務失敗という言葉だけだった。
「くそっ!」
俺は思わずベッドに携帯を叩きつけた。彼女の携帯は、電源を切っているのか、繋がらなかった。