第6章 私の初任務とあの人の存在
「すまなかった」
ファミレスの席について早々、男は私に頭を下げた。私はメニューを手に取り、ぽかんと彼を見つめた。
「最近寝てなくて、正常な判断ができなくなっていたんだ。君には本当に申し訳ないことをしてしまった…」
私が彼に抱いた印象は、真面目すぎる人ということだった。子供相手に机に頭がつくほど頭を下げるその姿、子供だからと変に取り繕うこともしない。私はニコリと笑った。
「お兄さん、いい人だね」
「………は?」
私の言葉に真底意外そうな顔をする男。丁度、私たちの頼んだ料理が来て、私は店員さんに笑顔でお礼を言った。そして、彼にお箸を渡した。
「あ、ありがとう」
礼儀が正しいのは、彼の性格なのだろう。私は笑いながら、頼んだハンバーグ定食を1口食べた。体に血がめぐるのを感じた。………美味しい!!
「………君は…その…」
「七種なずな」
私の名前と、ハンバーグを口に入れながらいう。すると、彼は慌てて自分も名乗り始めた。
「お、俺は風見裕也だ」
……律儀だ。真面目すぎて、融通が聞かないタイプだ。子供相手にここまで必死になるのは、彼の長所だと言えるし短所だとも言えよう。私はハンバーグを飲み込むと、彼に聞いた。
「じゃあ、風見のお兄さん。仕事は大丈夫なの?」
「…え…あ、ああ。仕事は7時に出勤だし。……それよりもその、お兄さんって……」
吃る彼を見て、私は首を傾げた。
「だって、まだおじさんじゃないんでしょ?風見のお兄さんが自分で言ったんじゃん」
「…………………すまない………」
頭を抱え込む風見さん。私はそんな彼の頭をポンッと手を置いた。風見さんが顔を上げる。
「気にしないで。お仕事大変なんでしょ?よく寝れた?」
「あ………ああ…。珍しくよく眠ることが出来た」
「なら、よかった」
私は席を立ち、彼の分まで水を注いできた。戻ると、彼は何故か再び頭を抱えていた。
「……大丈夫?」
「違う違う違う…。俺はそんな気はない。断じて違う……これは……そう……寝てないからだ……やはり人間四徹などするものではないな……ああ………」
大丈夫では無さそうだ。顔も真っ赤だし。私は彼に構わずハンバーグを堪能するのだった。