第6章 私の初任務とあの人の存在
「………はっ…はっ……はぁぁ…」
私は止めていた息を思いっきり吐き出した。息が乱れ、自分の心臓の鼓動が激しく聞こえてくる。
「…………上手くのってくれて良かった」
私はわざと動揺させることを言い、カルバドスの反応を待った。そして、こちらに突っ込んできたカルバドスに、私は思いっきりスタンガンを食らわせたのだ。私の足元には倒れてるカルバドスが。私は振り返って、お姉さんを見た。お姉さんはにこりと微笑み、こちらを見ている。どうやら満足してくれたようだ。
「お姉さ……」
そして、私は切り替えて、お姉さんたちの所へ戻ろうとした。どっとした疲れを感じ、今すぐにでもベッドで寝たかった。だが、私のそんな考えは吹き飛んでしまった。
「………なんで……」
大きく新鮮な空気を吸った瞬間、悪い悪戯のように私の脳裏にある記憶が蘇ったからだ。この匂いは…煙草の……
「紬」
そうだ。これはクソ親父の……。私は辺りを見渡した。なぜ…?まさかクソ親父はここにいた?辺りを探しても探しても、それらしい姿はない。もし…もしいたとするならば、何の目的で?
「……………っ!?!?」
気づかなかった。バーボンが私に叫んでいることなんて。
「なずな!!!」
今まで聞いたことのないバーボンの声にビクッとし、私は反射的に後ろを振り返った。
「あ………」
私が見たのは、気絶したはずのカルバドスがこちらにナイフを振り下ろしている光景。…………だめだ。避けきれな…
「カルバドス」
突然、大きな銃声が辺りに響き渡り、私は思わず耳を抑えてその場にしゃがみ込んだ。心臓が先程の非じゃないくらいバクバクいっている。顔を上げると、腕を抑えているカルバドスの姿があった。……カルバドス、これは絶対に腕痛めただろうな…。だって、2回目だし。
「……う………」
ベルモットのお姉さんは足を組み、微笑んでいた。それはとても綺麗だと思えた。……その手に持っている銃から煙が出てなければ。お姉さんは口を開いた。
「いい子ね、カルバドス。よくやったわ。でも、それ以上は駄目よ」
そして、ぽかんとしている私を置いて、ベルモットのお姉さんはカルバドスを連れて、その場を優雅に去ったのだった。