第6章 私の初任務とあの人の存在
~誰かside~
…動きが変わった。それに気づいたのは、振り返るなずなの目つきが鋭くなったときだった。
「…………あら、のんびりさんがやっと本気出したわ」
隣にいるベルモットが笑う。ベルモット。年齢、出生…全てが謎に包まれた女性。あの方のお気に入りであり、またあのジンとも関係を持っているとの噂もある。カルバドスのようなお気に入りを連れ回してはいるが、一定の相手はいない。
「どうしたの、バーボン。そんな怖い顔をして」
煙草を付け、クスクス笑うベルモット。
「……あなた、カルバドスが戦闘に入ると、手加減出来なくなること知ってて焚き付けましたね」
「あら、分かってたの?」
「分かりますよ。わざわざなずなの前で手加減しないでと言ったのも、彼女の本気を見たいからでしょう?」
「そこまで分かってて止めなかったのは、あなたの優しさと受け取っていいのかしら?」
あの子にままと慕われているのに非情ね、とベルモットは言う。なずなを見ると、彼女はカルバドスに背を向けて走って逃げていた。俺は無理やり笑った。本当は、割行ってでもこれを止めたい。それをしなかったのは、俺のあの子を利用すると決めた非情さからだろう。
「僕はあなたには逆らえませんから。それに僕は男です。あの子の母親にはなれませ……」
ドンっ!!
辺りに銃声が鳴り響き、俺の声をかき消した。俺はカルバドスを見た。まさか……あいつ……そこまで本気を出すのか!!
「………あら。あの子、銃なんか持っちゃって」
しかし、どうやら銃を打ったのはなずなの方だったようだ。あの子は逃げている最中、カルバドスのナイフを撃ったらしく、カルバドスが手を抑えている。
「………カルバドスから貰ったものでしょう。あなたが渡すように言った銃を、あの子はずっと持っていましたから」
「それも気づいてたの。優秀な探り屋ね、バーボン」
よくもまぁ、飄々とそんなことを言える女だと、俺は思った。なずなは、カルバドスの落としたナイフを拾い、それを彼へと出していた。………ここからが本番…か。